毎日履く靴、気づけば汚れや嫌な臭いが染み付いていませんか?
「洗剤でゴシゴシ洗っても、なんとなく臭いが残っている気がする…」
「泥汚れが繊維の奥に入り込んで、なかなか白くならない」
そんな悩みを抱えている方にこそおすすめしたいのが、重曹を使った「つけおき洗い」です。
特別な専用洗剤を用意する必要はありません。100円ショップやドラッグストアで手に入る重曹と、お家にあるバケツさえあれば、驚くほど簡単に靴をリフレッシュさせることができます。
重曹の持つ「弱アルカリ性」の力は、酸性の足の臭いや皮脂汚れに対して劇的な効果を発揮します。さらに、発泡作用と研磨作用が、繊維の奥に潜む泥汚れを浮かし出し、ブラシで軽くこするだけで驚きの白さを取り戻してくれるのです。
しかし、手軽だからといって自己流で行うのは禁物です。
「とにかく長い時間つければ落ちるはず」と一晩中つけっぱなしにしたり、「濃いほうが効きそう」と目分量で重曹を入れたりしていませんか?実はその行動が、大切な靴を劣化させたり、黄ばみの原因になったりする可能性があります。
この記事では、失敗しないための「黄金比率の分量」と「最適なつけおき時間」を、分かりやすく解説します。
また、もし洗った後に黄ばみが出てしまった場合の、クエン酸を使ったリカバリー方法も紹介。
正しい手順を知れば、面倒だった靴洗いが「汚れがみるみる落ちる楽しい作業」に変わります。
さあ、今週末は重曹つけおきで、あなたと家族の靴を新品同様に蘇らせてみませんか?
重曹つけおきで靴がきれいになる理由|臭いと汚れのメカニズム
「なぜ洗剤ではなく重曹なのか?」
その理由は、靴の汚れや臭いの性質と、重曹の持つ化学的な特性の相性が抜群に良いからです。なんとなく使うのではなく、仕組みを理解することで、より効果的に汚れを落とせるようになります。
酸性の「足の臭い・皮脂汚れ」を中和・分解
靴の臭いの主な原因は、足から出る汗や皮脂、そしてそれらをエサに繁殖する雑菌です。
人間の皮脂や汗から発生する「イソ吉草酸」などの臭い成分は、多くが「酸性」の性質を持っています。
これに対し、重曹(炭酸水素ナトリウム)は水に溶かすと「弱アルカリ性」を示します。
理科の実験で習った「中和反応」を思い出してください。酸性とアルカリ性が混ざり合うと、お互いの性質を打ち消し合いますよね。これが靴の中でも起こるのです。
- 酸性の汚れ(皮脂・汗汚れ) + 弱アルカリ性の重曹水 = 中和分解
この化学反応により、頑固な臭いの元が根本から分解され、水と一緒に洗い流せる状態になります。香料で臭いをごまかす消臭スプレーとは違い、臭いの原因そのものを断つため、洗い上がりのスッキリ感が段違いです。
参考:Chem-Station (ケムステ)|日本最大の化学ポータルサイト

研磨作用と発泡作用で泥汚れを浮かす

スニーカー、特に子供の運動靴に付着する「泥汚れ」は、不溶性(水にも油にも溶けない)の厄介な汚れです。繊維の奥深くに土の粒子が入り込んでいるため、表面をこするだけでは落ちません。
ここで役立つのが、重曹の物理的な作用です。
| 発泡作用 | 重曹はお湯に溶かすと、シュワシュワと微細な炭酸ガスを発生させます。この泡が繊維の隙間に入り込み、こびりついた汚れを浮き上がらせるサポートをします。 |
|---|---|
| 研磨作用 | 重曹の粒子は水に溶けきらない分が残ると、適度な硬さの研磨剤(クレンザー)として機能します。つけおき後にブラシでこする際、この粒子が泥汚れを掻き出す手助けをしてくれるのです。 |
ただし、強くこすりすぎると靴の素材を傷める可能性もあるため、「つけおき」で十分に汚れを浮かしておき、ブラッシングは軽い力で済ませるのが、靴を長持ちさせるコツです。
失敗しない準備|黄金比率の分量とつけおき時間
重曹つけおき洗いで最も重要なのが、「分量」と「時間」です。
「多ければ多いほど良い」「長ければ長いほど良い」というのは大きな間違い。適切な濃度と時間を守ることが、洗浄力を最大化しつつ、靴へのダメージを最小限に抑える秘訣です。
用意するものリスト(重曹・バケツ・ブラシ等)

まずは必要な道具を揃えましょう。ほとんどが100円ショップやホームセンターで手軽に入手できるものばかりです。
| 重曹(粉末タイプ) | 掃除用・食用・薬用とグレードがありますが、靴洗いには安価な「掃除用」で十分です。 ただし、小さなお子様が触れる場合や手肌が弱い方は、粒子の細かい「食用」を使うと安心です。 |
|---|---|
| バケツ(または洗面器) | 靴全体がしっかり浸かるサイズのもの。スニーカーなら10リットル前後の深めのバケツが使いやすいでしょう。 なければ厚手のビニール袋(ゴミ袋)を二重にして代用することも可能です。 |
| 洗濯用ブラシ | 柄がついているタイプが洗いやすくおすすめ。 古い歯ブラシでも代用できますが、広い面を洗うには専用ブラシの方が効率的です。 |
| 洗濯用石鹸 | つけおき後の仕上げ洗い用です。 重曹だけでも汚れは落ちますが、併用することで洗浄力が格段にアップします。 固形でも液体でも構いません。 |
| ゴム手袋 | 重曹は弱アルカリ性とはいえ、長時間触れていると皮脂を奪い、手荒れの原因になります。 肌が弱い方は必ず着用しましょう。 |
| お湯(40〜45℃) | 水ではなく、お湯を使うのがポイントです。 温度については後述します。 |
【黄金比】お湯1リットルに重曹大さじ3
ここが最大のポイントです。感覚で入れるのではなく、必ず計量しましょう。プロが推奨する洗浄効果の高い黄金比率は以下の通りです。
- お湯 1リットル に対して 重曹 大さじ3〜4杯
一般的なバケツ(約3〜5リットルのお湯を入れる場合)なら、重曹は大さじ10〜15杯(約1カップ弱)程度が目安になります。
なぜこの濃度なのか?
これより少ないと洗浄力が不足し、多すぎても水に溶けきらず無駄になるだけでなく、すすぎ残しの原因になります。「大さじ3」は、洗浄力とすすぎやすさのバランスが最も良いラインなのです。
また、必ず「40〜45℃のお湯」を使ってください。
重曹は水に溶けにくい性質があり、冷水だと洗浄効果が十分に発揮されません。また、皮脂汚れ自体も、体温より少し高い温度のお湯の方が溶け出しやすくなります。お風呂の残り湯などは温度が下がっていることが多いので、給湯器から新しいお湯を汲むのがベストです。
つけおき時間の目安は「30分〜1時間」
「汚れがひどいから、寝る前につけて翌朝洗おう」
そう考えている方は、今すぐストップしてください。
- 推奨時間:30分 〜 1時間
- 限界時間:2時間まで
これが鉄則です。
長時間のつけおき、特に「一晩(6時間以上)」の放置は、百害あって一利なしです。
長時間のアルカリ成分への浸漬は、靴に使われているゴムパーツの劣化を早めたり、ソールを貼り合わせている接着剤を溶かして剥がれの原因(ソール剥離)になったりします。また、金属のハトメ(靴紐の穴)がサビたり、変色したりするリスクも高まります。
「30分」あれば、重曹水は十分に繊維の奥まで浸透し、汚れを分解・浮遊させることができます。それ以上つけておいても洗浄効果は頭打ちになり、逆にダメージのリスクだけが上昇していくのです。タイマーをセットして、適切な時間で引き上げるようにしましょう。

【実践】靴の重曹つけおき洗い|5ステップで徹底洗浄
準備が整ったら、いよいよ実践です。
手順を守ることで、効率よく、かつ靴を傷めずにピカピカにすることができます。
Step1. 靴紐と中敷きを外し、泥汚れを予洗いする
いきなり重曹水にドボン!はNGです。
まずは靴紐と中敷き(インソール)を取り外します。これらも別途洗えますが、分けた方が細部まで汚れが落ちます。
次に、靴全体についた「泥やホコリ」を水で予洗いします。
乾いた状態の砂埃ならブラシで払い落とし、こびりついた泥はシャワーの水流で流してください。
この工程を飛ばして大量の泥がついたままつけおきをすると、バケツの中が泥水になり、せっかく浮かせた汚れがまた繊維に戻ってしまう「再汚染」の原因になります。
「表面の大きな汚れを落としてから、繊維の奥の汚れを重曹に任せる」というイメージです。
Step2. 重曹液を作り、靴全体をしっかり沈める
バケツに40〜45℃のお湯を張り、規定量の重曹(1Lにつき大さじ3)を入れてよくかき混ぜます。粉っぽさがなくなり、白濁した状態になればOKです。
そこに靴を沈めます。靴紐と中敷きも一緒に入れてしまって構いません。
この時、スニーカーなどの軽い靴はプカプカと浮いてきてしまいがちです。浮いてしまうと、水面から出ている部分だけ汚れが落ちず、「色ムラ」や「輪ジミ」の原因になります。
【浮かさない工夫】
- 水を入れた500mlペットボトルを靴の中に入れる(重しにする)
- バケツの上に洗面器などを乗せて蓋をする
- 靴全体が浸かるように、ジップロック等の密閉袋を使って空気を抜く
このようにして、靴全体が完全に重曹水に浸かっている状態をキープしましょう。
Step3. ブラシで残った汚れを優しくこすり洗い

30分〜1時間経ったら、靴を取り出します。
この時点で重曹水が濁っており、汚れが浮き出ているのがわかるはずです。
ここから仕上げのブラッシングを行います。
浮き上がった汚れをブラシで掻き出すイメージです。特に以下のポイントは汚れが残りやすいので念入りにこすりましょう。
- つま先のゴム部分(トゥキャップ)
- 靴底の溝(ソール)
- かかとの内側
- ベロ(シュータン)の縁
重曹の研磨効果が残っているので、そのままでも汚れは落ちますが、もし落ちにくい箇所があれば「洗濯用石鹸」をブラシにつけてこすると効果的です。重曹のアルカリパワーで汚れが緩んでいるので、普段よりも軽い力でスルッと落ちるはずです。
Step4. ぬめりが取れるまで徹底的にすすぐ(重要)
ここが最重要工程と言っても過言ではありません。
「洗ったのに乾いたら黄色いシミができた…」
この失敗の9割は、「すすぎ不足」が原因です。
重曹成分(アルカリ性)が繊維に残っていると、紫外線などの影響で黄色く変色する性質があります。これを防ぐためには、重曹成分を完全に洗い流す必要があります。
- まず、流水(シャワー)で表面の泡や汚れを流します。
- バケツに新しいお湯(または水)を張り、靴をその中でゆすります。
- 手で触って、重曹特有の「ぬるぬるした感触」がなくなるまで繰り返します。
「もういいかな?」と思ってから、さらにあと1回。それくらい念入りにすすぐのが、きれいな仕上がりのコツです。
Step5. 風通しの良い日陰で完全に乾かす
しっかりと水気を切ったら乾燥です。
洗濯機の脱水機能を使う場合は、靴用のネットに入れ、タオル等を詰めて型崩れを防ぎながら、1〜3分程度の短時間で行いましょう。
干す場所は、「風通しの良い日陰」が鉄則です。
「早く乾かしたいから」と直射日光に当てるのは避けてください。紫外線はゴムの劣化や変色、残ったわずかな汚れの黄変を加速させます。
【早く乾かすコツ】
- 靴用のハンガーを使って、水を切れやすくする(つま先ではなくカカトを下にするタイプ等、水が溜まらないように)
- つま先やカカトの中に、丸めた新聞紙やキッチンペーパーを詰める(水分を吸い取ってくれる上、型崩れ防止にもなります)。こまめに交換するとさらにGood。
- 扇風機やサーキュレーターの風を当てる
特に冬場や梅雨時は乾きにくいので、サーキュレーターの活用がおすすめです。生乾きは雑菌の繁殖(=あの嫌な臭いの復活)を招くので、中まで「カラッ」となるまで完全に乾かしましょう。
ここに注意!重曹で洗えない靴・失敗するケース
重曹つけおきは万能ではありません。素材によっては、取り返しのつかないダメージを与えてしまうことがあります。洗う前に、手元の靴が重曹に対応しているか必ずタグ等を確認してください。
参考:NIKE公式:シューズのお手入れ方法(クリーニングの基本)
レザー(本革・合皮)・スエードはNG

革靴、レザースニーカー、スエード(起毛革)素材の靴には、重曹を使ってはいけません。
- 本革・合皮:
革の主成分はタンパク質です。アルカリ性の重曹はタンパク質を分解・変性させる性質があります。結果、革が硬くなったり(硬化)、ひび割れたり、変色(シミ)の原因になります。合皮も表面のコーティングが剥がれやすくなるリスクがあります。これらは専用のクリーナーでケアしましょう。 - スエード・ヌバック:
起毛素材は水気に弱く、つけおき自体がNGです。重曹の粒が毛の間に入り込むと白く残って取れなくなることもあります。
色落ちリスクのある天然染料・派手なスニーカー
キャンバス地(布)のスニーカーであっても、濃い色(赤、紺、黒など)や、天然染料を使っているものは注意が必要です。
重曹のアルカリ性は洗浄力が強いため、汚れと一緒に染料まで落としてしまうことがあります。
【パッチテストの方法】
心配な場合は、洗う前にテストをしましょう。
濃い目の重曹水を含ませた白い布や綿棒で、靴の目立たない場所(ベロの端やかかと周辺など)を軽くトントンと叩きます。布に靴の色が移るようなら、つけおき洗いは避けてください。中性洗剤(おしゃれ着用洗剤など)で優しく洗うことをおすすめします。
アルミ製の金具がついている靴
スニーカーのハトメ(靴紐を通す穴)や装飾に「アルミニウム」が使われている場合も注意です。
重曹(アルカリ性)は、アルミと化学反応を起こし、アルミ部分を黒ずませたり、腐食させたりすることがあります。
一般的なスニーカーのハトメは真鍮やステンレス、あるいは塗装されているものが多いので大丈夫なケースが多いですが、素材が不明な金属パーツが多くついている靴は、長時間つけないようにするか、金属部分に重曹水が触れないように部分洗いする方が無難です。
洗ったら黄ばんだ?原因とクエン酸での劇的リカバリー
「注意して洗ったはずなのに、乾いたら白いスニーカーに黄色いシミが…!」
これは「アルカリ焼け」や「黄変」と呼ばれる現象です。でも諦めないでください。化学の力を使えば、この黄ばみを劇的に消すことができます。
黄ばみの正体は「アルカリ性の残留」
先ほども触れましたが、主な原因は「すすぎ不足による重曹成分(アルカリ性)の残留」です。
アルカリ性の成分が繊維に残ったまま紫外線に当たると、化学反応を起こして黄色く変色してしまいます。
これを解消するには、アルカリ性と逆の性質を持つ「酸性」のもので中和してあげれば良いのです。
「クエン酸水(酢水)」ですすぎ直せば白さが戻る

ここで登場するのが「クエン酸」または「お酢」です。
これらは酸性の性質を持っており、繊維に残ったアルカリ成分を中和し、透明にしてくれる効果があります。
【中和洗い(リカバリー)の手順】
- バケツにきれいな水を張り、クエン酸を小さじ1〜2杯(お酢なら大さじ2〜3杯)入れて溶かします。これが「中和液」になります。
- 黄ばんでしまった靴を、この中和液に15分〜30分程度つけおきします。
- 引き上げたら、再度きれいな水でしっかりとすすぎます。
- 風通しの良い日陰で乾かします。
驚くことに、アルカリ性が原因の黄ばみであれば、クエン酸水につけた瞬間にスーッと色が消えていくのを目の当たりにできるでしょう。
黄ばみ予防として、通常の重曹つけおき洗いの最後の仕上げ(すすぎの直前)に、この工程をプラスするのも非常に効果的です。柔軟剤代わりにもなり、仕上がりがふっくらとします。
よくある質問|靴の重曹つけおきトラブル
最後に、記事内で触れきれなかった細かな疑問や、よくあるトラブルについてQ&A形式で回答します。
重曹水につけっぱなしで一晩放置しても大丈夫ですか?
長時間つけたほうが汚れが落ちそうな気がしますが、一晩の放置は推奨しません。
記事内でも解説しましたが、長時間のつけおきはゴムの劣化、接着剤の剥離、金属パーツの腐食、そして黄ばみのリスクを高めるだけです。汚れ落としの効果は1時間程度で頭打ちになります。「最大でも2時間」を目安に引き上げてください。
重曹とオキシクリーン、どっちが靴洗いにいいですか?
目的によりますが、「白さ」ならオキシ、「消臭・手軽さ」なら重曹がおすすめです。
オキシクリーンなどの「酸素系漂白剤」は、漂白力が強く、上履きや白スニーカーを真っ白にしたい時に最適です。一方、重曹は消臭効果が高く、肌への刺激も比較的マイルドで、100均で安く手に入る手軽さがあります。
日常的な汚れや臭いケアなら重曹、久しぶりに洗う真っ黒な靴ならオキシクリーン、という使い分けも良いでしょう。
すすぎ残しがないか確認する方法はありますか?
指でこすって「ぬるぬる感」がなければOKです。
重曹成分が残っていると、水に濡れた状態で触った時にツルツル、ヌルヌルとした感触があります。これがなくなり、指が「キュッ」と止まるような感触になるまで、何度もお湯を変えてすすいでください。
ドラム式洗濯機で洗う時も重曹を入れていいですか?
洗濯機の説明書に従ってください。粉末のまま入れるのは故障の原因になります。
一部の洗濯機では、重曹の使用を禁止している場合があります(固まって排水経路を詰まらせる恐れがあるため)。使用可能な場合でも、必ずお湯で完全に溶かしてから投入するか、液体タイプの使用を推奨します。基本的には、靴洗いは洗濯機に負担をかけるため、バケツでのつけおき+手洗いをおすすめします。
上履きの頑固な黒ずみも重曹で落ちますか?
つけおきだけでは落ちにくい場合、「重曹ペースト」が有効です。
ゴム部分やつま先にこびりついた黒ずみは、単なるつけおきだけでは落ちないことがあります。その場合は、重曹に少量の水を混ぜて「ペースト状」にし、汚れ部分に直接塗り込んで30分ほど放置(パック)してからブラシでこすってみてください。研磨効果が集中し、汚れが落ちやすくなります。

